部屋にあるたった1枚のコンドーム。使われずにずっとあるコンドーム、もうこのコンドームを使うことはできない。卒業できない。
昨日のことのように思い出す。
はじめて買った唯一のコンドーム。あれはもう10年以上前の学生の頃だ
家に女性が来る!そう友人に報告した。
嬉しそうに話を聞いてくれる友人。すると
これセックスしに来てるよ
私はびっくりした。本当にそんな風には思ってなかったからだ
これこそ童貞だ。度胸がないのか、女心がわかってないのか。
課題だよ課題。課題を一緒にやるだけだよ。そう言う私に対して珍しく折れない友人。
そんなことはない、絶対セックスだよ。
そんなやり取りをかれこれ何十分したのだろうか。とても有意義な時間だった。
ビッビッビ!!ローターのような天啓が降りた!
ゴムを買わないとコンドームを買わないと念のため買わないと!焦りだす私。
一緒に買いに行ってくれるか?
こうやってはじめてのおつかいが始まった。
10メートルほど進んだ時に急にちょっと待ってくれと友人を止めて部屋に戻ろうとする私。
お気に入りのジャケットを着ていく!
笑いながらいいね、そういうの大事と温かく見守る友人。一張羅で出てくる私。
そして近くの最寄り駅のドラッグストアへ。
じゃあ行ってくるね。そう言いながら緊張した足取りでコンドームコーナーを探す。
種類があるようで無い、無いようである。何を買えばいいか全く分からず高いのを買った。
ふう…足がフワフワする。みんなこんな緊張してコンドームを買っているのか。度胸があるな!私は店員さんを選んで買いに行ってしまうな。
おにいさんがいいのか
おねえさんがいいのか
おじいちゃんがいいのか
おばあちゃんがいいのか
おとなりさんがいいのか
おはよう。この日ほどロックな1日はないかもしれない。
0.02
当時にしては薄い方だと思う。
友人が童貞だな、ちゃんと薄いの買って気持ちよくなろうとしてるな!
えっ!普通じゃないの!?破れたらどうしようビビって心配になる心配症。
いざ当日。何事もなく課題が終わった。順調に終わった。
女心をわかっていたのは私だった。10年以上前からテレビ好きなのでコンプライアンスに遵守していたのだ。
それから定期的にオナニーのお供として1枚、また1枚と最後の1枚になった。
いつもより気持ちいいので使うと決めたその日は朝からワクワクし、仕事中に思い出し勃起をしたものだその気持ちよさよりも大切な最後の1枚。
もうこのコンドームを使うことはできない。